『怒り (上)』 吉田修一 (中公文庫)

 今野敏の任侠シリーズ3冊に続き、Mさんにいただいたのは吉田修一の『怒り』。
 上下巻の2冊で600ページ近くあり、ボリュームたっぷり。
 なかなか手がつかずにいたので、日曜日からの5連休のうちに読む予定でした。

 ・・・が、岩手へ向かう車中は読みかけだった『無伴奏』。実家では内田康夫×2冊。
 結局、帰りの車中+帰宅後1時間弱で、きのう上巻を読み終えました。

若い夫婦が自宅で惨殺され、現場には「怒」という血文字が残されていた。犯人は山神一也、二十七歳と判明するが、その行方は杳として知れず捜査は難航していた。そして事件から一年後の夏――。房総の港町で働く槇洋平・愛子親子、大手企業に勤めるゲイの藤田優馬、沖縄の離島で母と暮らす小宮山泉の前に、身元不詳の三人の男が現れた。

 なかなか手がつかずにいたのは、見るからに登場人物が多そうに思えたから・・・。
 読んでみたら、予想以上の多さでした。。
 身元不詳の三人のうち、いったい誰が山神一也なのか?
 三人のうちの誰かと決めつけてよいのか分かりませんが、さすがに・・・。
 謎の人物といえば、黒川美佳の存在も気になります。

 気になるのは下巻がどう展開するか――だけではありません。

「南條さん、知ってますか? さっきカレンダー見てて気づいたんですけど、今年って四月四日も、六月六日も、八月八日も、十月十日も、十二月十日も全部水曜なんですよ」(P176)

 全部水曜日なのは、2012年。
 今年は全部月曜日――はともかく、知らなかった・・・。

 横で空を見上げた克弘が、「台風きてるんだよ」と呟く。
「……まだ小笠原諸島辺りだと思うけど、わりと強い台風。もう一つ沖縄の方にも大きなのが近づいてて、どっちかが19号で、どっちかが20号」 (P135)


 これは気にするなと言うほうが無理・・・。

 午後三時過ぎに房総半島を直撃した台風は、とてもゆっくりと移動し、長時間続いた暴風もついさっきぴたりと止まった。(P158)

 こちらが台風19号で、沖縄を襲ったのが台風20号――という設定。
 念のため(?)、デジタル台風で確認してみました。

 まずは台風19号――。
 小笠原近海を通過しましたが、房総半島を直撃していません。


 続いて台風20号――。
 南シナ海にあって、沖縄を襲うことはありませんでした。


 まあ、フィクションですから――と思っていたら、二〇一二年一月 中央公論新社刊の文字。
 2012年1月刊ということは、執筆時からすると(少しとはいえ)未来を描いていたことになります。

 ・・・にしては、この二つの台風の位置関係、実際の傾向をとらえています。
 しかも、この二つの台風は同じ時期に存在していました。
 一年ほど前とは思えないほどの高精度!

 吉田修一、恐るべし!

                   (2016年1月25日初版発行)

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