『小説吉田学校 第六部 田中軍団』 戸川猪佐武 (角川文庫)

 半年前に読んだ『小説吉田学校』。
 最後の第八部まで読み終えていましたが、一つだけ抜けていたのが、この第六部。
 1ヵ月ほど前に見つけたので、ようやく読んでみました。
 舞台は昭和52年から53年にかけて。当時の首相は福田赳夫でした。

 どうしても気になるのは、所々に現われる天気に関する記述。

 そして五十一年、三木武夫内閣のときに、ロッキード事件が火を噴いた。田中が逮捕されたのが、その七月二十七日であった。この日、正午には東京の気温は三十一・一度、湿度は五十三パーセントに上った。田中にとって、これまでの人生のなかで、もっとも不快指数の高い夏の日であった。屈辱の夏だった――と、田中は思っている。(P10)

 気象庁のHPで調べたところ、12時の気温は確かに31.1度、湿度は53パーセントでした。
 これはまったく問題ありません。

 一月四日午前、福田首相は東京発下り新幹線のシートにいた。なかばリクライニングにして、背を伸ばす福田の眼は、昨日の寒々しい曇天とは打って変わって、すっかり晴れわたった青い空に向けられていた。(P134)

 これは昭和53年1月4日の描写。4日が晴れわたっていたのはよいのですが、問題は前日の1月3日。

    ・東京  降雪21cm 最深積雪21cm   1978/1/3の実況(気象庁HP)
    ・横浜  降雪15cm 最深積雪15cm   1978/1/3の実況(気象庁HP)

 今より降雪量が多かったとはいえ・・・。大雪は午前中だけで、昼にはやんだとはいえ・・・。
 雪にまったく触れずに、「寒々しい曇天」で済ますのは、かなり違和感があります。自分だけでしょうか?

 天気以外には、こんな問題が・・・。

 最近では、田中角栄首相が、五十一年の新年早々、東南アジアの各国を歴訪した。(P70)

 昭和五十一年の新年というと、首相は三木武夫のはず。
 先に引用した部分にも、はっきり「五十一年、三木武夫内閣のとき」と書かれています。
 これはかなり初歩的なミスですね。。
画像
 おまけに、こんなものもありました。
 これは著者の責任ではありませんが・・・。

 右の画像は212ページの一部で、注目は左から2行目。
 鄧小平のはずが、なぜか、小鄧平
 そして、の時がなぜか、横向きに・・・。
 こういう誤植は初めてみました。
 9版でこれなので、最後まで訂正されなかったのでしょう。
 珍しい誤植ですが、希少価値とまではいかないようです。

 『小説吉田学校』はこれですべて記事をアップしたことになります。
 政治関連では、次は『戦後史のなかの日本社会党』を再読予定。

 本書では、昭和52年の参議院選挙後の内紛が描かれています。 
 飛鳥田委員長はこの時に、選ばれたんですね。
 社会党の委員長で記憶に残っているのは、この人から。
 飛鳥田という名前が、子供心にも印象的でした。
 何をしたのかは、まったく覚えていませんが・・・。


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不快な夏――角福の確執
闘いのあと――後継の密約
若い実力者たち――新集団の結成
外交の季節――タカ派福田と中国の間
官僚の反乱――荒れる行政改革
目白の闇将軍――田中派の結束
内閣改造――後退する"角影"
総理への射程――中曾根・大平の選択
人気凋落――大福のかけひき
解散風のなかで――"鈍牛"大平の苦悩
大角連合――ひび割れた主流派体制
燃える軍団――田中角栄と側近たち
大逆転――大平勝つ
認証式と裁判と――終わりなき闘い
              (昭和56年5月10日初版発行 昭和57年7月20日9版発行)

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この記事へのコメント

navarea11
2012年07月14日 09:48
政治家を扱う記述で、揺らぎがかなり目立つモノがあります。斜め読みをしてみたらどうでしょうかね。上記の例で**首相は・・・をこの政党での実質権力を持つやつは、などと読み替えると、実態に近くなってくるはずです。派閥対立がそのまま現れている。と言うことに他ならないわけですがね。
政治家を扱う小説などでも、天気の記述は権力者の気分・様相などを間接的に表現することがあり、事実に合わないことも珍しくありません。「昨日の寒々しい曇天とは打って変わって、すっかり晴れわたった青い空」を訳せば、「奴らを打ちのめすための突破口が見いだせた」と読み替えると意味は通じるかと思います。
「東京の気温は三十一・一度、湿度は五十三パーセントに上った。田中にとって、これまでの人生のなかで、もっとも不快指数の高い夏の日」
数値で追うと不快指数は決して高くはありませんが、訳せば「外はからっとしていても気分は不快絶好調」とでも言えば良いでしょうかね。

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