『歴代アメリカ大統領総覧』 高崎通浩 (中公新書ラクレ)

 (日付が変わったので)きのうの夜のNHK、22時からの番組にマイケル・サンデルが出ていました。
 『究極の選択』のお題は「格差拡大 あなたはどこまで許せますか」。
 いくつかの事例を議論した後、ロールズの「無知のベール」に触れて終わったのは意外でした。
 サンデルはロールズの正義論や「無知のベール」の概念に批判的立場だったはず。
 触れるのはよいにしても、これだとサンデルの真意が伝わらないのでは・・・?
 などと思うのは、少し前に『サンデルの政治哲学 <正義>とは何か』を読んだからです。

 この本の第三講は「共和主義の再生を目指して――『民主政の不満』のアメリカ史像」で、建国当初から現在にいたるまでの思想的な流れが描かれています。
 登場人物はジェファソン、マディソン、ハミルトン、ジャクソン、(セオドア&フランクリン)ルーズベルト、トルーマン、レーガンなど、多くが大統領経験者。さらに、連邦党(フェデラリスト)や民主共和党(リパブリカン党)、ホイッグ党が登場。アメリカの政党というと、民主党と共和党しか知らないのですが・・・。

 そんなわけで、本棚の奥にあった『歴代アメリカ大統領総覧』を開いてみました。
 はじめに、アメリカの州名が入った地図、歴代大統領のランキングがあり・・・。
 さらに「アメリカの政党の変遷」という図があり、連邦派、民主共和党、ホイッグ党の文字も・・・。
 残念ながら、まるで記憶に残っていません・・・ということで、読み直してみました。

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序章  アメリカの伝統的外交政策
第一章 ヴァージニア王朝――初期六代
第二章 ジャクソニアン・デモクラシーと西漸運動
第三章 奴隷制と南北戦争期
第四章 「金ぴか」の時代
第五章 海外進出と革新主義
第六章 繁栄と恐慌
第七章 東西冷戦期
第八章 現代
               (2002年9月1日印刷 2002年9月10日発行)

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機会の国、競争社会の肯定、個人主義、単独行動主義……。それはどうして生まれたのか。初代ワシントンからブッシュJr.まで43代の大統領の事跡を辿りながら、「アメリカ」を一冊で知る好著。

 43代ですが、クリーヴランドはカムバックしているので、この本に載っているのは42人。
 名前を覚えていたのは、半分くらい。きっと、すぐに忘れることでしょう。。
 まあ、大統領の名前を覚えるよりも、政党の流れを把握するのが目的なので、問題ありませんが・・・!?

 それにしても、共和党が出来た経緯は意外でした。
 
 この組織は、これ以上の奴隷制の拡大には反対するという一点で一致する諸党派が既成政党の枠を超えて集まったものだった。リンカーンのようなホイッグ党員や自由土地党支持者のみならず、民主党の中でも南部プランター勢力の党支配に反発する人々も含めて、また奴隷制廃止論者も含めて、とにかく、奴隷制拡大反対を最大公約数として諸分子が合流したのである。(P87)

 奴隷制拡大に反対したり、奴隷制廃止を主張したりしていたのは、共和党より「リベラルな」民主党だと思い込んでいたのですが、まったくの逆でした。

 鉄道建設の事業は、いうまでもなく巨大な資本を必要とする、リンカーン以来の共和党政権は、自由放任主義が標榜される時代にあって、それに抗するかのように、積極的に援助を与えた。(P111)

 「自由放任主義に抗する」共和党というのも、昨今の共和党からすると、意外な感じ。
 民主・共和の二大政党は長くその看板を掲げていますが、時代背景の変化とともに、主義・主張を変えてきた、ということなのでしょうか。

 ところで、上の文章、必要とするの後は「、」ではなく、「。」のほうが妥当に思えるのですが・・・。
 でも、このくらいは序の口(?)です。
 まずは、ジェファソンについての一文――。

 一八〇〇年の大統領選で、ジェファソンは四年前の雪辱を果たしてアダムズに勝利した。フェデラリスツの嫌がらせで、当選確定が遅れたが、八一年三月四日、ジェファソンは、前年夏に正式に首都となったワシントンD.C.で大統領に就任した。(P28)

 八一年なわけはなく、正しくは一八〇一年。省略し過ぎです。。

 一九五〇年代前半マッカーシズムという名の「赤狩り」旋風が吹き荒れ、全米に大論議が起こった際、ケネディは曖昧な逃げ口上に終始し、民主党リベラル派の深い失望を生んだ。二〇年以上反差別運動を進めてきたルーズベルト夫人エレノアがケネディとい政治家を信用しなかったのは有名な話である。(P236)

 タイプミスではありません。実際、このように書かれているのです。
 ケネディとい政治家は脱字で、正しくはケネディという政治家でしょう。

 一九六三年一一月、時代は転回した。二日、ケネディがかつて「自由の戦士」と讃えた南ヴェトナムの独裁者コ・シンジェム兄弟が暗殺され、その二〇日後、ケネディは、大統領再選運動の遊説で、テキサス州ダラスを訪問していた。そして、オープンカーでパレード中の午後〇時三〇分頃、狙撃され、三〇分後に絶命した。(P238)

 これだけでは判断できませんが、次の文章と比較すると・・・。

 こうしてアメリカは、バオダイに見切りをつけ、大地主階級のゴ・シンジェムを首相に擁立するとともに、軍事顧問団を投入し、たちまちのうちにアメリカ製兵器装備の三個師団をつくりあげた。(P214)

 コ・シンジェムは誤りで、正しくはゴ・シンジェム。なぜか、濁点が抜けました。。
 最後はレーガンについての記述――。

 六六年の大統領選では予備選でニクソンに敗れ、七六年の選挙でも現職フォードと共和党大統領候補指名を争うが僅差で敗退している。(P274)

 大統領選が行われるのは、西暦で4の倍数の年・・・なので、六六年(1966)ということはありえません。
 正しくは、六八年(1968)です。

 アメリカ史の流れをつかみながら、大統領のトリビアを知ることが出来る本。
 それはよいのですが、途中からは誤植が気になってしまい、なかなか集中出来ませんでした。
 そういえば、ほかに、もう一ヵ所おかしなところがあったような・・・。
 どこだったか忘れてしまったので、思い出したら、追記します。。

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この記事へのコメント

navarea11
2012年03月20日 20:12
> 夜のNHK、22時からの番組にマイケル・サンデルが出ていました
私も最後は意外でした。というより、この番組自体は収録された番組ですから編集がなされて、一部カットされているはずです。ある種の自己規制が働いているためですが、そのこともあってか、内容が不発だったように思えます。
編集前の番組がどうなのかは判りませんが、はっきり言って日本の流れとは異なり、ある種不謹慎な用例も入っていたはずです。編集では原語を含めて総チェックされているようですから、テレビで見るのと実際のあの場での会話はかなり違ったものかもしれません。故に編集なのでしょう。
そう言ったら、どこかの局の「朝までなんちゃら」は、かなり勇気のある番組に思えます。あくまで地上波の場合ですが・・・
たかはし
2012年03月23日 01:41
編集がなされているのは分かりますが、その場合でも、
主張する点は変わらないはずでし、変えてはいけないはずです。

以前、教育テレビでオンエアされた「ハーバード白熱教室」には
サンデルと交流のある小林正弥氏が関わっていました。
その流れからすると、
今回の番組にも氏が関わっていたと考えるのが自然なのですが、
それにしては最後のまとめが不自然、というのが自分の感想です。

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