『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』 大木毅 (岩波新書)

 5冊のクリスティー(先月実家から持ち帰った3冊+ブックオフで買った2冊)を読み終えたので、久しぶりに新書を――ということで購入した2冊のうちの1冊が『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』。
 3ヵ月前に出ていたとは・・・最近、チェックが甘いですね。。
 
 帯には 戦場ではない 地獄だの文字。
 『応仁の乱』著者・呉座勇一の推薦の言葉にも興味を惹かれました。

冷戦期のプロパガンダによって歪められた独ソ戦像がいまだに日本では根強く残っている。本書は明快な軍事史的叙述を軸に、独ソ両国の政治・外交・経済・世界観など多様な面からその虚像を打ち払う。露わになった実像はより凄惨なものだが、人類史上最悪の戦争に正面から向き合うことが21世紀の平和を築く礎となるだろう。


 なぜこれほどまでに惨禍が拡大したのか、19世紀的戦争と何が違っていたのか。少し長くなりますが、終章から引用――。

 最初、対ソ戦は、通常戦争、収奪戦争、世界観戦争(絶滅戦争)の三つが並行するかたちで進められた。しかし、この三種類の戦争が重なるところでは、国防軍による出動部隊の支援やレニングラードへの飢餓作戦などの事象が現れていた。続いて、通常戦争での優勢が危うくなると、収奪戦争と絶滅戦争の比重が大きくなる。さらに敗勢が決定的になり、通常戦争が「絶滅戦争」に変質した。しかも、それは、絶滅戦争と収奪戦争に包含され、史上空前の殺戮と惨禍をもたらしたのである。
 これに対し、ソ連にとっての対独戦は、共産主義の成果を防衛することが、すなわち祖国を守ることであるとの論理を立て、イデオロギーとナショナリズムを融合させることで、国民動員をはかった。かかる方策は、ドイツの侵略をしりぞける原動力となったものの、同時に敵に対する無制限の暴力の発動を許した。また、それは、中・東欧への拡張は、ソ連邦という、かけがえのない祖国の安全保障のために必要不可欠であるとの動機づけにもなったのであった。(P220/222)


 ドイツでヒトラーの体制が磐石となっていった背景について書かれているのも、腑に落ちました。ドイツ国民はヒトラーの単なる「被害者」ではなく、「共犯者」であったという視点。
 独裁者が出現するのにはそれなりの背景があるわけで、時代・地域にどこまで依存するものなのか・・・。日本はどうなのか、などと考えさせられます。

 同時に買ったもう一冊は『「松本清張」で読む昭和史』。
 これから帰省なので、車中で読み終える予定です。

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 はじめに 現代の野蛮
第一章 偽りの握手から激突へ
 第一節 スターリンの逃避  第二節 対ソ戦決定  第三節 作戦計画
第二章 敗北に向かう勝利
 第一節 大敗したソ連軍  第二節 スモレンスクの転回点
 第三節 最初の敗走
第三章 絶滅戦争
 第一節 対ソ戦のイデオロギー  第二節 帝国主義的収奪
 第三節 絶滅政策の実行  第四節 「大祖国戦争」の内実
第四章 潮流の逆転
 第一節 スターリングラードへの道 第二節 機能しはじめた「作戦術」
 第三節 「城塞」の挫折とソ連軍連続攻勢の開始
第五章 理性なき絶対戦争
 第一節 軍事的合理性の消失  第二節 「バグラチオン」作戦
 第三節 ベルリンへの道
終章 「絶滅戦争」の長い影
  文献解題 略称、および軍事用語について 独ソ戦関連年表 おわりに
    (2019年7月19日第1刷発行 2019年9月13日第6刷発行)

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