『複数の時計』 アガサ・クリスティー 橋本福夫 訳 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 霜月蒼の『アガサ・クリスティー完全攻略』で最低評価の☆(星1つではなく、星0.5)だった『複数の時計』。
 恐る恐る(?)の再読でした。

 カバーの紹介文――。

 秘書・タイプ引受所から派遣されたタイピストのシェイラは、依頼人のミス・ペブマーシュの家の居間で待っていた。そこは、時計が無数に置いてある奇妙な部屋だった。突然、柱時計が三時を告げ、思わず立ち上がったシェイラの顔は、微笑から驚愕へと変わった。ソファの横に、男の惨殺死体が横たわっていたのだ! 死体を囲むあまたの時計の謎とは? ポアロの口を借りて、クリスティーが推理小説論を展開する稀有な作品。

「時計が無数に置いてある」はさすがに言いすぎ。実際に部屋にあったのは、「窓ぎわの隅にある振子式の柱時計」と「戸口の近くの壁にかけてあるカッコー時計」、持ち込まれた4つの置時計の計6つ。なぜ時計が持ち込まれたのかに加え、4つの置時計がいずれも実際より1時間進んだ4時13分を指しているのも謎ですが・・・。

「例の置時計の件はどうなのですか?」
「ああ! あの置時計。あの問題の置時計ねえ!」ポアロはにやりとした。「あれは×××(犯人の名)のしわざだということが判明すると思いますよ。すでに述べたようにこの犯罪は単純な犯罪だったのだから、怪奇な犯罪であるかのように偽装をこらしたわけですよ。(以下略)」(P381)


 置時計の意味はそれだけ・・・?

「しかし、元来は置時計が何かの意味を持ったものだったに違いないと思いますがね、グレグソンのプロットでは」
「それはそうです。そのプロットの中では、三つの置時計がそれぞれ、五時一分、五時四分、五時七分を指していることになっていました。それは五一五四五七という、金庫の組合わせ数字だったわけです。(以下略)」(P382)

 四つの4時13分と示された置時計にこのような意味付けはなく、「怪奇な犯罪であるかのように」見せかけた偽装以上の意味はなかったわけで・・・。複雑な人間関係はともかく、冒頭に提示した時計の謎を回収し切れなかったのでは、評価が低くなるのも仕方がないですね。。

 まったく意味はないですが、部屋にあった時計を集めてみました。
 ちょうど四つあったので、意味なく4時13分に・・・。

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 現在、実際に使っているのは左上の置時計のみ。右上のは単一電池を入れれば動いたような気もしまが、何しろ買ってから35年以上経つので・・・。
 懐中時計はケータイを持つ前に使っていましたが、すでにチェーンも切れ、行方不明です。。

 話は変わり、下は77ページに載っているスケッチ。
 これをもとに、秘密情報部のコリン・ラムはウイルブラーム(頭文字はW)・クレスントの61号を探すのですが・・・。

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 ハードキャスルは、便箋を表側に向け変える手数をはぶいて、裏側にエンダビイの住所を走り書きしていた。ホテルのアドレスは、さかさまになって、左下隅にきていた。(P383)

 ボクはまた或る紙片をさかさまに見るというおろかさもおかしました。(P387)

 ・・・ですよね。

 61・Wはどちらも逆さに読めます(19・M)が、あまりに見え見え。見た瞬間に怪しいと思えたので、この点だけは秘密情報部より上でした。。
 ただ、これを自然に書いた数字の9というのはちょっと無理が・・・。滑らか過ぎる曲率は、やはり6ですよね。

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