『盤上に死を描く』 井上ねこ (宝島社文庫)

 第17回『このミステリーがすごい!』の優秀賞・『盤上に死を描く』。
 日曜日の太陽研の例会で、Mさんに頂きました。

 盤上に描かれるのは詰将棋で、その配置の見立てに使われたのは被害者の××でした。。
 私の頭でも浮かぶのは現場の住所ですが、札幌や京都ならともかく、名古屋では難しいですね。
 ――というか、住所ではベタ過ぎて、ミステリーになりませんか。。
 犯行の動機は今ひとつ釈然としませんが、この発想は斬新と感じました。

 この謎を解くのは、捜査一課の女性刑事・水科優毅と所轄の佐田。
 元詰将棋作家の水科刑事だからこそ解ける事件――ですね。
 第一部~第三部や各節のタイトルは、詰将棋っぽい用語。
 登場する詰将棋ユートピア(通称詰トピア)、編集主幹・鶴本というのも、いかにも・・・。
 これは確かに名古屋を舞台にするしかありません。

 著者自身も詰将棋作家ということで、「殺人図式」のほかに、もう一題載っています。
 ハートの初形曲詰で、適度な難しさです。

画像

 詰将棋集ではないので、手順は省略して――はよいですが、同衾の誤植!
 まあ、同金は将棋にしか登場しないですし、形も似ていますし・・・。

 ほかにも、こんなのがありました。
 141-142ページの水科と佐田の会話――。

「女流棋士とかは詰将棋を作る人もいるらしいけど。私がやっていた頃には女性らしき人は見かけませんでした」
「ということは、これから会う三村さんも詰将棋とは関係がない可能性が高そうですね。なんだかいっこうに犯人の明確な動機がつかめません」
「ミズちゃん。詰将棋というのは誰でも思いつくような手ではなくて、意外な手順で解決するんでしょ。だったらこの事件もそうした意外な決め手があるんじゃないかと思っているんだ」
 佐田は水科の顔を覗き込むようににして言った。


 最初の発言は「私がやってた頃には」とあるので、水科の発言。
 最後の発言は「ミズちゃん」と呼びかけているので、佐田の発言。
 では、二番目の発言は・・・?

 158ページ、スーパーで昼食を買う時の一コマ――。

 水科はサンドイッチとチョコバーを、佐田はいつものようにおにぎりを選び、一つのカゴに入れて、レジに並んだ。

 2人で食事をする場面はいくつかありますが、「いつものようにおにぎり」は違和感が・・・。

 水科はおにぎり三つとコロッケ二つをかごに入れた。後ろを振り返ると、佐田がからあげ弁当を手に持っているのが見えた。(P66)

 おにぎりを選んでいたのは佐田ではなく、水科。
 佐田が選んでいた場面もあったかもしれませんが、「いつものように」はちょっと無理。。

 詰将棋にたとえると、「作意手順は問題なくても、いくつかキズがある」といったところでしょうか?

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第一部 作図
   1 素材  2 配置  3 虚構  4 改作
第二部 解図
   1 転機  2 狙い  3 紛れ  4 変化  5 収束
第三部 検討
   1 変化  2 検討  3 趣向  4 紛れ  5 作意  6 詰上り  7 結果稿
 第17回『このミステリーがすごい!』大賞選考経過
 [解説] 西上心太
                 (2019年2月20日第1刷発行)

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