『この世をば (下)』 永井路子 (新潮文庫)

 きのう、『この世をば』の下巻を読み終えました。

 30年以上前に読んだ時に印象に残っていたのは、道長と三条天皇との暗闘。
 ・・・ですが、三条天皇として登場するのは、魔の翼恋しかるべきの二章だけでした。
 考えてみれば、在位は一条天皇の25年に対し、三条天皇は5年足らず。
 綏子とのエピソードは、東宮時代のもの。
 これだけ時間が経つと、覚えている部分が曖昧になるのも仕方がありません。

 そして、道長の例の歌が出てくるのが最終章の虧けゆく月だったのも意外。
 もう少し手前に出てくるものと思っていました。

   この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 虧けたることも なしと思へば

 この歌が詠まれたのは道長が亡くなる10年以上も前のこと。
 逆にいうと、これ以降の道長について、語ることはあまりないということなのかもしれません。

 道長の日記にも『栄華物語』にも書かれていない歌が今に伝わるのは、藤原実資の『小右記』のおかげ。
 これも何だか皮肉な話です。

 摂関政治は道長時代が最盛期で、その後は院政へと移行していきます。
 きっかけの一つが、道長の実子・頼通の異母弟の能信が後三条天皇を推したこと・・・というのも、皮肉な話。
 『望みしは何ぞ 王朝―優雅なる野望』の再読が必要ですね。

 皮肉ついでに一つ、あげておきます。
 333ページの系図と332ページの文章の一部――。

画像

 文章中は源方理(かたまさ)なのに対し、系図は源万理。
 方理が正しく、万理は誤り。
 32年前のことは覚えていませんが、たぶん初めて見つけました。。

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覇者の妻/見えざるいのち/乳房/内憂外患/和歌屏風/二人のきさき/黄泉への道/
炎の章/白き帳/魘魅の法師/夜の水鶏/魔の翼/恋しかるべき/虧けゆく月
   資料のことなど
     解説 尾崎秀樹
         (昭和61年9月15日印刷 昭和61年9月25日発行)

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