『軽井沢殺人事件』 内田康夫 (角川文庫)

 『平城山を越えた女』と同様、『遺譜 浅見光彦最後の事件』がきっかけの再読。
 草西珈琲店の老マスターがよい味を出しています。

 浅見家と草西老人との繋がりがどういうものであるのか、ほんとうのところ、浅見はあまりよく知らないのだが、草西老人は浅見兄弟にとって、父親の代から気を許して付き合える相手であった。
 草西はしきりに「浅見はんには、えろうお世話になりました」と、兄弟の父親のことを賞賛し、感謝する話ばかりをするのだが、具体的に父親が何をしたのかは、浅見はもちろん陽一郎も知らないし、あえて訊き出す気にもならないままでいた。
 浅見兄弟の母親である雪江未亡人も、「私は何も知りませんよ」と、ひと言も喋ってはくれない。ほんとうに知らないのか、それとも、葬り去ってしまわなければならないような過去なのか、どうやら後者のようなにおいもしないではない。 (P223)


 このようなキャラクターが四半世紀以上経って、『遺譜 浅見光彦最後の事件』に生きるとは・・・。
 ほかの作品で「プロットなしで書き進める」と言っている内田康夫。
 どこまで真に受けてよいのか分かりませんが、このキャラクターは見事な伏線だと思います。

 草西老人以上の『軽井沢殺人事件』のウリは、浅見光彦と竹村警部の初競演。
 ただ、メインは浅見光彦で、事件の終止符は浅見の視点になっています。
 竹村警部がどこまで真相に迫れたのか、ちょっと気になるところです。

 浅見には亜矢子が何を言いたがっているのか、分かっている。すべてを闇の中、霧の中に閉ざしたまま、事件に終止符を打ったことに対して、ひと言、礼を言うつもりなのだろう。
 まさに、事件の真相が軽井沢の霧の中に包まれたような終幕であった。誰が被害者なのか、誰が加害者なのかすら、曖昧模糊として霧の中にあった。 (P372)


 こんな曖昧な終わりになったのは、事件の背景が大きすぎるから・・・。
 モデルになったのは、昭和62年の東芝機械ココム違反事件。 (Wikipedia
 ココムとは、対共産圏輸出統制委員会のこと。 (Wikipedia
 今は「対共産圏」という概念がないわけで・・・時代を感じます。

 この作品で登場するのは大芝精機ですが、容易に連想可能。
 「実在のいかなる団体・個人等ともいっさい関係ありません」とは言えないですよね。。

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 プロローグ
 第一章 幽霊の橋  第二章 似顔絵の女  第三章 仏の寝顔     第四章 逃走
 第五章 離山山頂  第六章 闖入者たち  第七章 "名探偵"対決  第八章 霧の中に
 エピローグ
    解説 内田康夫
          (平成2年10月25日初版発行)

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