『政友会と民政党 戦前の二大政党制に何を学ぶか』 井上寿一 (中公新書)

 第46回衆議院議員総選挙が公示されました。
 3年前の前回は政権選択選挙と呼ばれましたが、今回はどうなんでしょうか?
 民主党の大敗は避けられそうになく、政権の行方はほぼ決まったような・・・。

 きのう(6日)の朝日新聞の一面トップには、衆院選序盤情勢調査の結果が載っていました。

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自民、単独過半数の勢い  民主100議席割れも

 16日投開票の衆院選について、朝日新聞社は4、5日、全300小選挙区の有権者を対象に電話調査を実施、全国の取材網の情報も加えて公示直後の序盤情勢を探った。それによると、現時点で(1)自民は小選挙区が好調で比例区と合わせ単独で過半数を確保する勢い(2)民主は惨敗で100議席を割り込む公算が大きい(3)第三極の日本維新の会は比例区で民主と肩を並べ、小選挙区と合わせて50議席前後に(4)日本未来の党は比例区で8議席前後を確保しそうだが小選挙区では苦戦、などの情勢になっている。

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 他紙の情勢調査も同様の結果で、二大政党とは言い難い結果になりそうです。
 獲得議席だけから見れば、前回の民主308&自民119の結果も二大政党とは言い難いですが、(善悪はともかく)自民党は「腐っても自民党」的な何かを持っているのに対し、民主党にはそこまでの重みがありません(まったくの主観です・・・)。政権から離れると、遠心力が強く働きそうな感じがします。

 そんな時に「二大政党制に何を学ぶか」とはずいぶんな皮肉ですが、逆にいうと、これを逃すと・・・という話もあります。何しろ、この本で取り上げられる二大政党は戦前の政友会と民政党で、70年前の話。下手をすると、次の二大政党の時代まであと数十年・・・の可能性も、ないわけではなく、本書出版のタイミングはこれがギリギリだったのかもしれません・・・!?
 でも、問題にすべきは、なぜ二大政党制が機能しないのか、ではなく、なぜ国会が言論の府としての役割を果たせないのか、のように思います。所々で引用されている石橋湛山の論評の中で、ロンドン海軍軍縮条約について触れた、以下は示唆に富んでいます。

   同じ結論に達するにしても、其討議を十二分に尽させ、而してそこに到らしむると、
   然らざるとでは、人心の受くる感銘は全く違う。デモクラシーが近代政治の容義と
   せらるるに至った所以はそこにある。(P105)


 時の総理大臣は浜口雄幸。関連して、ちょっとおかしな記述がありました。
 以下は、1929年7月9日に公表された、「当面緊急の十大政綱」です(P77)。

    一、政治の公明
    二、国民精神作興
    三、綱紀の粛正
    四、対支外交刷新
    五、軍備縮小の完成
    六、財政の整理緊縮
    七、国際総額の逓減
    八、金解禁の断行
    九、社会政策の確立
    十、其の他の政策


 おかしいのは、十大政綱なのに「其の他の政策」・・・という点ではなく、四の「対支外交刷新」。
 単独なら問題ないのですが、以下の記述とあわせると・・・。

 日華関税協定の成果を踏まえて、浜口内閣は「十大政綱」の第四項に「対支外交刷新」を掲げる。(P99)
 
 日華関税協定の調印は1930年5月6日 ――というのは、巻末の「関係略年表」にも載っています。
 「対支外交刷新」が十大政綱の第四項に入ったのは、いったいいつなのでしょうか・・・?

 これなどは瑣末な問題ですが、それはともかく、日本史で習ったはずなのにすっかり忘れていた大正末期から戦前・戦中にかけての流れを、ある程度つかむことが出来たのは収穫でした。
 瑣末ついでに、こんなのをあげておきます。

 それにもかかわらず、林内閣は居座りを決め込む。二大政党は激高した。林内閣打倒で両者は手を結ぶ。五月十三日、両党の幹事長が会見する。

 小泉又次郎民政党幹事長「政民両党は現在の時局を憂慮し現内閣に対する態度は期せずして一致していると思う」
 松野鶴平政友会幹事長「御説の通り我々も全然同感である、林内閣に対する態度は議会の解散を受けたる直後既に決定している」 (P198)


 子孫をたどると・・・。

   小泉又次郎 → 小泉純也 → 小泉純一郎 → 小泉進次郎
   松野鶴平  → 松野頼三 → 松野頼久

 小泉進次郎と松野頼久が二大政党の幹事長となり、手を結ぶことはないと思いますが・・・。
 万が一そうなったら、二大政党以前に、政治が終わってますね。。


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 はじめに
Ⅰ 政友会――保守政党から包括政党へ
  1 政友会の成立  2 三人の総裁  3 外交政策  4 国内政策
Ⅱ 民政党――新党の理念と政策
  1 反政友会の新党=民政党  2 基本理念  3 国内政策  4 外交政策
Ⅲ 二大政党制の展開
  1 民政党の攻勢           2 守勢に立つ政友会
  3 「憲政の常道」=二大政党制  4 政友会の反転攻勢
Ⅳ 二大政党下の政策争点
  1 協調外交  2 恐慌克服政策  3 政策論争の基本姿勢  4 論戦のその帰結
Ⅴ 危機の中の二大政党制
  1 満州事変と二大政党制の対応  2 協力内閣構想から政党内閣崩壊へ
  3 二大政党のファシズム批判    4 対外路線の転換
Ⅵ 新しい政党政治システムの模索
  1 危機の沈静化と二大政党  2 政民提携論の帰結
  3 反ファッショ勢力の再台頭  4 近衛内閣の成立
Ⅶ 二大政党の回答とその後
  1 虚構の挙国一致  2 戦時体制下の「民主」化  3 失われた可能性  4 政党の解消
 おわりに
                            (2012年11月25日発行)

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