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zoom RSS 『奇面館の殺人 (上)』 綾辻行人 (講談社文庫)

<<   作成日時 : 2015/04/26 23:10   >>

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 この一、二週間に何回か触れた読みかけの「式のない物理の本」を差し置いて読み始めた「式のある物理の本」――をさらに差し置いて読み始めたミステリーは綾辻行人。
 五年ほど前、持っている6冊の「館シリーズ」を集中的に読んで以来です。

 この間、講談社文庫からは6冊の<新装改訂版>が出され、さらに『暗黒館の殺人』と『びっくり館の殺人』が刊行されましたが、『暗黒館の殺人』は文庫とはいえ、4巻(!)もあり、とりあえず(!?)パス。『びっくり館の殺人』はなぜ見送ったのか覚えていませんが・・・。
 そんなわけで、久しぶりの「館シリーズ」。
 きのう書店で『奇面館の殺人』を見つけ、どうしようか迷ったのですが、上下2巻なら何とかなりそうな感じ。
 何より、目次に四月の吹雪の文字を見つけてしまっては、買うしかありません。

 綾辻行人の「館シリーズ」は年月日が明示されているのが特徴(?)で、今回は1993年4月3日〜4日。
 舞台は「東京都の最果ての、誰も知らないような名の土地」に立てられた奇面館。
 おそらく奥多摩なのでしょうが、実際に雪が降るような状況だったかを、調べてみました。

 もう四月になったというのに、さながら真冬の寒さだった。道中とうとう雪まで舞いはじめ、すでに建物の屋根や森の木々が白く染まりつつある。 (P28)

 「四月の吹雪、とは」
 「強烈な寒波と低気圧がどうこうって、さっき車のラジオで云ってましたけれど」 (P30)


 考えられるのは、1)下層寒気が入っている中、東進してきた南岸低気圧、2)上層寒冷渦に伴い、南岸で発生した小低気圧、のいずれかですが――。

 下はNCEPのサイトを利用して作成した再解析図。
 左は地上天気図、右は500hPa天気図で、時刻はいずれも1993年4月3日21時です。

画像

 これを見ると、地上の低気圧は留萌沖で、南岸にそれらしい擾乱はありません。
 500hPaの寒冷渦は沿海州付近。本州付近の流れはゾーナルで、上層寒気は弱そうな・・・。
 南東海上には優勢な高気圧があり、下層寒気も弱そうな・・・というより、むしろ暖気移流の場。

 蛇足ながら、下はワイオミング大学のサイトから引用した、同時刻の館野のエマグラム――。

画像

 2000メートルより下の気温はすべてプラス。
 少なくとも「強烈な寒波」ではありません。

 まあ、フィクションですから・・・。
 でも、具体的に年月日を示されると確かめたくなるのは、悲しい性なのです。。

 雪によって外界と遮断された館は、ミステリーに必要な設定。
 この天候でなかったら、展開がどう変わり得たかというのは、下巻の興味の一つです。
 もう一つの興味は、「あの人物」の本当の正体。
 あまりに早く示されたので、red herring(赤いニシン)のような感じもしますが・・・。

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  プロローグ 
  第一章 四月の吹雪   第二章 六人の招待客    第三章 未来の仮面
  第四章 奇面の集い   第五章 二重身の刻     第六章 眠りの罠
  第七章 惨劇       第八章 閉ざされた仮面   第九章 同一性の問題
                             (2015年4月15日第1刷発行)

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<5月4日追記>
 navarea11さんから指摘のあった1988年4月8日を調べてみました。
 1988年4月8日の「降雪の深さ日合計」9cmは、4月としては1位の記録(統計開始は1953年)。
 1988年4月の「降雪の深さ月合計」9cmは、4月としては1位の記録(統計開始は1953年)。
 1988年4月8日の最深積雪9cmは、4月の「月最深積雪」としては2位の記録。
 これだけ統計開始が1876年なので・・・。

 7日昼から降り出した雨は、気温が下がった夜遅くから雪に変わったようです。
 気温・露点温度の低下は、地上風向が北東から北北西に変わったタイミングに対応しているような・・・。
 ピーク時の8日未明には、時間降水量が5,6ミリもあり、一気に積もったのでしょう。

      ・4月7日の東京の実況(気象庁HP)
      ・4月8日の東京の実況(気象庁HP)

 下はNCEPのサイトを利用して作成した再解析図。
 7日から8日にかけては、南岸を低気圧が発達しながら東北東へ進んでいました。
 高気圧が北からかぶさっているのも、いい感じです。。

 ●1988年4月7日21時の解析天気図    左:地上   右:500hPa
画像

 ●1988年4月8日9時の解析天気図    左:地上   右:500hPa
画像


 ワイオミング大学のサイトから引用した、同時刻の館野のエマグラム――。
 850hPaは-3℃以下。発達中の南岸低気圧で、この気温では・・・雪ですね。

 ●館野のエマグラム    左:4月7日21時   右:4月8日9時
画像

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コメント(2件)

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最も近い事例に、1988年4月8日があろうかと。パターン的には2014年2月7日や15日に近い様相がありますが、いかがでしょう。
navarea11
2015/04/29 04:57
2014年2月7日と15日は、例の南岸低気圧ですね。
どちらも東京で大雪になりましたが、
時期的に近いのは1988年4月8日でしょうか。
この時は東京で9cmの積雪を記録。
東京都心で雪に変わったのは7日夜遅くのようですが、
小河内は7日夕方には気温1℃台まで下がっているので、
設定に近いタイミングで雪に変わっていたと考えられます。
本文に、NCEP再解析データから作成した天気図と
ワイオミング大学のサイトから引用したエマグラムを貼りました。
たかはし
2015/05/04 23:41

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