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zoom RSS 『そして誰かいなくなった』 夏樹静子 (講談社文庫)

<<   作成日時 : 2014/04/22 23:10   >>

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 前の記事で書いたように、岩手からの帰りは――。

   ふつうなら約4時間のところ、10時間かけて・・・。

 ということで、『雷鳥九号殺人事件』に続いて、車内で2冊目。
 実家の本棚にあった『そして誰かいなくなった』。これも前回読んだのは、20年以上前のことです。

 タイトルから分かるように、モチーフはアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』。

 豪華クルーザー"インディアナ号"に五人の客が招待されたが、出航の夜のにぎやかな晩餐に、突然、不気味な声が新入する。各々の、秘めた罪を告発するそれは、クリスティの、有名な予告殺人事件小説と酷似し、船内は恐怖に凍りつく。果たして、一人、また一人と乗客が殺されていって……。画期的本格推理長編。

 誰も誰かの違いが大きいのですが、肝心な点を忘れているとは・・・。
 読んだのが20年以上前とはいえ、自分でも呆れました。。
 やられた、という感じです。
 でも、これだけは・・・。

「インディアナ号の船内で、またも死者が出ました。クルーの一人がフライングデッキで、頭を殴られて死んでいます。どうぞ」
「場所をいってください、どうぞ」
 竜崎はサテナビのデジタルを確認した。
「北緯三十四度三十二分、東経百三十八度六十分。どうぞ」(P112)


 百三十八度六十分って、それは百三十九度ですよね。
 もう一ヵ所出てくるのですが、船舶ではこんな言い方をするのでしょうか?

「今日の午後五時、海上保安庁と連絡をとった時には、インディアナ号はこの地点にいたのです。北緯三十四度三十二分、東経百三十八度六十分。御前崎の南東約四十二マイル」(P169)

 ところで、この作品中の事件、年月日が特定できます。

「あれは昭和四十五年の秋だったから、もう十八年も昔になるんだなあ。ぼくは四十五、東京本社経済部で、まだ野心に燃える現役記者だった……」 (P159)

 ・・・ということは、昭和63年。

「もう朝ですよ。四月二十一日木曜の朝だ」 (P233)

 モータークルーザー<インディアナ号>から、2182の国際緊急無線で「メーデー」が発せられたのは、四月二十三日土曜の午前九時半であった。 (P294)

「インディアナ号は、四月十八日月曜の十五時に葉山マリーナを出港し、一週間の予定で沖縄へ向けてクルーズしていました」 (P294)

 ほかにも何ヵ所かあったはずですが、いずれも1988年の4月のカレンダーと整合します。
                     → 万年カレンダー(1988年)

 日付が特定できるうえに、低気圧などに関する記述があるから、つい・・・。
 以下の天気図はすべてNCEPの再解析データを用いて作成したものです。。

 それにしても、今日は絶好のヨット日和とでもいうのだろうか。
 うすい春霞の漂う青空にはかもめがとびかい、海面も同じくらい明るいライトブルーに輝いて、陽炎がたっている。(P10)


 これを見ると、18日はリッジは残っているものの、すでに高気圧後面。
 絶好のヨット日和というには・・・。
 実際、横浜は雲量10が続いていたので、ちょっと苦しいかも。
                → 横浜の実況 江ノ島の実況

 ●1988年4月18日9時       左:地上天気図     右:500hPa天気図
画像

 18日9時に九州南部にあった低気圧は、19日9時には関東付近へ――。

 ●1988年4月19日9時       左:地上天気図     右:500hPa天気図
画像

 なので、19日夜のはじめのこの描写は・・・。

 いつのまにか、海の上はとっぷり暮れていた。
 空には青白い大きな星が光っていたが、その数が昨夜より少ないのは、雲がひろがり出したからだろうか。(P129)


 さらに――。

 彼はコックピットのファックスから破りとった紙をチャートに並べた。
「気象ファックスといって、一日二回、午前九時と午後四時に自動的に送られてくるものです。これは今日の午後四時に出てきたんですが、東北地方の上に低気圧が発生しているのがわかりますね。九州の南にもつぎの低気圧がある」(P170)


 関東付近の低気圧が東北地方の上に進んでいたかもしれませんが、「発生」は不自然のような・・・。
 「九州の南にもつぎの低気圧がある」も厳しいです。
 次の低気圧は、20日9時で東シナ海なので・・・。

 20日の明け方――。

「風に湿気がありますから、まもなく雨が降り出すかもしれません」
 時計の針は五時に近付いている。もともと入港予定は午前九時だったが、みんなで船内を見廻っていた間一時間くらいのロスがあるので、あと五時間くらいだろうか。
「前線の通過のため、荒れてきています。つぎの低気圧も前線にそってのぼってくると予想されますから、あまり天候が崩れないうちに、入港を急ぎたいと思います」(P205)


 ちなみに、入港を予定していたのは鳥羽。
 いずれにしても、低気圧はまだ遠いです。。

 ●1988年4月20日9時       左:地上天気図     右:500hPa天気図
画像

 20日10時頃の描写――。

 今やヨットは嵐の真只中に抛り出されていた。窓から見える海面は白波で真白だ。(略)
「――いずれにせよ、これ以上低気圧が接近する前に、一刻も早く港へ逃げ込みたいんです」
 途中で彼は手をのばして気象ファックスから垂れている紙を破りとった。毎日午前九時と午後四時に自動的に送られてくるといっていたものだ。
 それを見ながら応答していたが、とにかく入港を急ぐということばで打ち切った。
「昨日東北地方にあった低気圧は遠ざかってるんですが、その前線に沿って、九州の南にあったつぎの低気圧がのぼってきてるんです。午前九時現在で四国に来ている」(P224-225)


 21日9時でも九州の南なのですが・・・。

 ●1988年4月21日9時       左:地上天気図     右:500hPa天気図
画像

 で、21日朝の描写はどうかというと――。

「ようやく低気圧を抜け出して、海は静かになっています。食事の支度を手伝ってくれるとありがたいんだが」(P233)
 (略)
「午前六時ごろ、ようやく海が凪いだ。先に風が止んで、それから波がおさまってくるものだね」
「今船はどのへんにいるんですか」
「低気圧をかわしたところで、キャプテンがサテナビとチャートで確かめたところ、室戸岬の南二十五マイルくらいだそうだ」(P235-236)


 低気圧はこれからです。。

 ●1988年4月22日9時       左:地上天気図     右:500hPa天気図
画像

 インディアナ号は23日には沖縄へ――。

 二十三日土曜日は、前日からひろがっていた雨雲が一掃され、沖縄地方は真夏のような晴天に恵まれていた。
 午後五時では、まだ明々とした南国の陽光が照りつけていた。(P296)

 しかし、この気圧配置では・・・。
 東シナ海から高気圧は張り出しているものの、西谷、かつ強風軸が・・・。

 ●1988年4月23日9時       左:地上天気図     右:500hPa天気図
画像

 1988年4月23日の那覇の実況を見ると、18時まで雲量は10で経過。雨もぱらついていました。
 最高気温は19.1℃。「この月で最高気温が20℃に届かなかった唯一の日」というのは、何とも皮肉です。

 フィクションと分かっていても、手がかりがあるので思わず確かめてしまう・・・。
 何度でも書きますが、悲しい性なのです。。

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第一章 インディアナ号出帆   第二章 招待者は誰?   第三章 さまよえる船
第四章 背水の防禦   第五章 生命の綱   第六章 裁決   第七章 丘のホテルにて
   解説 権田萬治
                      (1991年7月15日第1刷発行)

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 権田氏の解説の最後は、次のようにまとめられていました。

 さらに、もう一つ付け加えたいのは、この作品の意表を突くトリックのことである。
 実は、こういうトリックは、まことにクリスティー的であって、その点では、クリスティーのもう一つの名作に対する挑戦的な意味も持っているといえるかも知れない。
 その名作とは、一体何か、それは、お読みになった後で、皆さんにお考え頂く宿題にしておきたいが、とにかく、最初から最後まで、この作品は、クリスティーの名作を思い出させながら、しかも、まったく別の現代的な推理小説として楽しめる意欲的な力作なのである。 (P324)


 もう一作がまるで分かりませんでしたが、こちらのサイトに答えがありました。
 この作品も(大昔とはいえ)読んだはずなのに、まったく結びつかないとは・・・。
 次に帰省した時に探してみます。。

     ・ホテルニュージャパン火災

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