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zoom RSS 『なぜ風が吹くと電車は止まるのか 鉄道と自然災害』 梅原淳 (PHP新書)

<<   作成日時 : 2012/09/03 12:45   >>

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 『なぜ風が吹くと電車は止まるのか』――。このタイトルでは、買うしかありません。。
 風だけでなく、大雨や落雷、地震などの自然災害が鉄道に与える影響も書かれています。
 また、停電・火災・人身事故の問題にも意外に多くのスペースが割かれていて、特に、停電絡みでの発電に関する記述には、著者のこだわりを感じました。

 そんな中、なぜこのタイトルが選ばれたのか? は、実際、強風で電車が止まったり、遅れたりする機会が少なくないからでしょう。最寄の京葉線は、強風の影響を受けやすい路線。著者が住んでいるのもこの沿線のようで、風を意識する機会が多いのかもしれません。

 ただ、その風の記述がちょっと大ざっぱなような・・・。

 従来、JR東日本は沿線に設置された風速計が風速毎秒25秒メートルを指していれば時速25キロメートル以下での徐行、同30メートルであれば運転を見合わせていた。しかし、2006(平成18)年1月19日からは風速毎秒20メートルで徐行、同25メートルで運転中止と改められている。この結果、よく止まるようになったという次第だ(P90)。
 「少々の風で列車は止まる」とはいうものの、実はJR東日本の基準でさえ結構緩い。高速道路では状況にもよるが、風速毎秒15メートル以上で速度規制が敷かれ、同20メートル以上で通行止めとなってしまう。(P92)


 ちなみに、JR東日本のサイトには次のようなQ&Aが載っています。

   強風が吹いているとき、どのようにして運転規制(運転中止・速度規制)を行うのですか。

    沿線に設置した風速計により、在来線では、風速が20m/s以上になると
    速度25km/h以下の徐行を行い、風速が25m/s以上になると運転を見合わせます。
    また新幹線では、20m/s以上の風速で段階的に徐行や運転見合わせとします。
    (強風対策として防風柵等を設置した区間においては、運転規制を行う風速値が異なります。)


 同様のQ&AはNEXCO東日本のサイトにもあります。

   東京湾アクアラインは風速何m以上で通行止めになるのでしょうか

    最大風速15m/秒以上の強風のときは、必要に応じ、
    高速道路交通警察隊(千葉県警)と協議して「最高速度規制」を行います。

    また、最高速度を規制しても皆さまに安全に通行していただくことができないと判断した場合には、
    通行止めを実施します。その判断の目安となる最大風速は、20m/秒以上です。
    ただし、風速だけでなく風向や刻々と変化する天候などを総合的に勘案して決定しているので、
    風速20m/秒以下の場合でも通行止めを行うことがあります。


 徐行・速度規制の閾値は、JR東日本で20メートル、高速道路(アクアライン)で15メートル。
 運転見合わせ・通行止めの閾値は、JR東日本で25メートル、高速道路(アクアライン)で20メートル。
 著者の記述と矛盾はなく、これだけ読むと、JR東日本の基準のほうが緩そうですが・・・。

 問題は風速の「内容」。
 少し古いですが、この論文からの引用です。

    調査の結果、風観測に関して、車両の転覆に大きな影響を与えるものは瞬間風速であり、
    列車の運転規制については平均風速ではなく瞬間風速で行うべきであることが明らかにされた。
    これを受け、JR東日本では、自社管内の風速計が
    すべて瞬間風速を観測できるタイプであることを確認したうえで、
    1987年10月から風速計で観測した瞬間風速値をそのまま運転規制に用いることとした。


 規制に用いる風速が平均風速から瞬間風速に変わったきっかけは、余部鉄橋列車転落事故(Wikipedia)。その基準が下げられるきっかけになったのは、JR羽越本線脱線事故(Wikipedia)です。

 一方、道路関連のもっと古い論文には次の記述があります。

    著者らの行ったヒアリング調査では、日本道路公団が管轄している高速道路で、
    10分間の平均風速が25m/s異常(一部、東京湾アクアライン等20m/s)になると、
    通行止めの処置がとられている。


 論文自体は古いですが、規制に平均風速を用いているのは今も変わりません。

 著者の記述は、鉄道が瞬間風速なのに対し、高速道路は平均風速であることが抜けています。
 瞬間25メートルの風と平均20メートルの風はどちらが起こりやすいか?
 アクアラインの通行止めの頻度・京葉線や内房線の運転見合わせの頻度を正確に知っているわけでありませんが、少なくともJR東日本の基準のほうが緩いとはいえないでしょう。

 風の次は雨――。
 線路冠水の例として、1993(平成5)年8月27日の東海道新幹線・東京−新横浜間で起きた冠水があげられています。

 気象庁の観測ではこの日、東京都心では正午から15時までの3時間に142ミリメートル、ピーク時の13時から14時までの1時間に65ミリもの降水量を記録している。(P70)

 気になったので(!?)、気象庁のHPで調べてみたところ、確かに「65ミリ」がありましたが、その数字があったのは13時の欄。
 通常、記載されるのは「前1時間」なので、時間65ミリ降ったのは12時から13時の間。
 さらに、12時・13時・14時・15時の前1時間降水量は28ミリ・65ミリ・49ミリ・23ミリなので、正午から15時までの3時間降水量は65+49+23=137ミリ。142ミリになるのは、11時から14時までの3時間降水量ですね。

 気象に関わるのはほかにもあるかもしれませんが、見つけられず・・・。
 能登線列車脱線事故(Wikipedia)の出てくる雨量計はアメダスではないので、確かめられませんでした。

 でも、こんなのを見つけました。

 東京都心部に敷設されたJR東日本の路線のうち、東海道、東北、中央、山手、東北といった各線の開業時期は明治初めから20年代である。(P196)

 「東北」が二つあるのですが・・・?

 いろいろ書きましたが、興味深い話題が多かったです。
 あさっては電車に乗る予定なので、車両のガラスの表示を確かめて見ようと思います。。

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プロローグ 東日本大震災と鉄道
第1章 地震と鉄道
第2章 雨と鉄道
第3章 嵐と鉄道
第4章 都市の鉄道と災害
第5章 人に話したくなる鉄道の災害対策
            (2012年8月31日第1版第1刷)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
何だか、ワシャワシャとろくでもないコメントが載っていますが、気にせず書きます。
列車の瞬間風速での規制は、確かに余部鉄橋の列車転落事故が契機になりました。ただ、一部の鉄道会社は1970年代にあった、荒川橋梁嬢の地下鉄脱線事故から、瞬間風速を使うようになったようです。共通するのは耐風圧。車輪がそれに対応する荷重を支持できるか否かに関わるためですが、自動車と鉄道での大きな違いは設置面積。この違いは大きいようです。その影響もあって平均と瞬間を使い分けているのではないでしょうか。
飛行機では、離発着で使用する風速は2分平均(管制塔から航空機への報知)が使用されますから、単純に風速と言っても色々です。
navarea11
2012/09/03 23:33
「ろくでもないコメント」はトラックバックのことですね。
1ヵ月ほど前からろくでもないのが多くなっていて、
後手に回りがちですが、適宜削除していますので、ご了承下さい。

自動車と列車、確かに設置面積の違いは大きいですね。
記事中で引用した論文のほかにもいろいろあるようなので、
調べてみます。
飛行機が2分平均を使っているとは知りませんでした。
こちらも興味深いので、調べてみます。
情報、ありがとうございました。
たかはし
2012/09/05 00:09

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